B1 (海外文献紹介)
"Metal Spinning, From Ancient Art to High-Tech Industry/METAL FORMING - SEPTEMBER 2002"


メタルスピニング (ヘラ絞り)
古代の技からハイテク産業へ
スピニングはコンピューター制御によるハイテク製造
プロセスに進化しています。

今日メタルスピニング(ヘラ絞り)に分類される技術は、紀元前3000年に古代エジプトで行われていた陶器の壷の製造法が起源といわれています。スピニングマシンは75年前に開発され、手動の絞り旋盤から油圧スピニングマシン、テンプレート制御機を経て今日のプレイバックCNC制御重負荷スピニングマシンへと発展してきました。現在のプレイバックCNC制御スピニングマシン(図1)は、プラチナの単品製造でも、アルミ反射板の大量生産においても高い採算性を発揮しています。
より強力で洗練されたスピニング技術

スピニングマシンには、安定性を確保するために一定の質量が必要です。質量があると、高速で薄物を加工する場合でも振動を抑えることができ、厚物を加工する場合には公差を厳密に保つことができます。そのような幅広い加工作業には、スピンドルの高速回転性能、縦方向と横方向の十分なスライド推力、高速の成形機能などが必要です。また、機械の操作が簡単で、切替えが素早くできるということも大切な要素になります。
スピニングマシンは絶えず進化しており、プレイバックモード、オンラインまたはオフラインモード、またはプレイバックとCNCサブルーチンの組合せでプログラムが可能なものなどが出現しています。
プレイバックモードの場合、まず作業員がジョイスティックとポテンショメーターを使って試作品を作ります。人間は視覚と手の反応の間に時間差があるので、試作品は緩やかな速度で製作します。制御装置はこのすべての機械の動きを記憶します。試作品が製品要件を満たしていれば、記憶された製造プログラムの実行スピードを使用材料の許容限度まで上げて、本生産を始めます。プログラムの最適化はオンライン(作動中に)でもオフラインでも行うことができます。
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図1−最新式プレイバック/CNC制御スピニング成形機は色々な材料で色々な大きさの製品を製造することが出来ます。また、試作品から大量生産まで最大の費用効果を発揮します。
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図2−この製品は、円錐部分はシアフォーミング、円筒部分はスピニングという2種類の加工法で製造されました
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費用効果の向上

スピニングとシアフォーミング(一方向絞り)では、両者を組合せたり(図2)、設定を変えずに二次成形や切削加工を行って費用効果を高めることが出来ます。プレスや深絞りに比べて、スピニングとシアフォーミングは小さい動力しか必要としません。また、スピニングで使われる工具は、パンチやダイとは対照的な簡単な形状のマンドレルだけなので、非常に安価です。
スピニングはまた融通性に富んでいます。作業手順の変更はオンラインまたはオフラインでプログラムを変えるだけで行えます。最新のスピニングマシンでは、作業員が工具を簡単かつ素早くしかも最小のコストで修正できるようになっています。
この方法を用いると、実質的に無制限とも言える種々の形状の製品を製造することが出来ます。特に、凹部形状の製品においては、他の方法では実現不可能ないろいろな方法を選択することができます。製品メーカーはこれによって設備と工程の最適化を行い、製品品質をさらに高めることができます。
新鋭スピニングマシンは次のような特長を有しています;
  • 融通性が高い
  • 自動化率が高い
  • 最適な材料結晶粒子の流れが得られる
  • クラック伝播のリスクが少ない
  • 高い機械的強さと硬さが得られる
  • 高い材料変形率により材料コストが削減できる
  • 1回の設定で各種の操作が可能である
  • サイクルタイムが短い
どの用途においても、スピニングとシアフォーミングでは大きな費用効果が得られます。この特典は単品や試作品だけでなく、小中量の生産、さらには大量生産においても発揮されます。
スピニング方法
マルチパススピニング (多段絞り)
ブランクまたは下加工したディスクを機械の心押し台のチャックで固定し、回転させます(図3)。二軸複合スライド上のスピニングローラーは一連の往復運動を繰り返しながら金属を次第に成形していきます。補助スライドや工具交換機を用いると、プロファイリング(外形加工)、切削、エッジトリミング(端面加工)、カーリング(曲げ加工)、ビーディング(溶接)、フランジング(フランジ付け)などの仕上げ加工を行うことができます。
B4 図3−マルチパススピニングでは、ブランクまたは下加工したディスクを機械の心押し台のチャックで固定し、回転させます。二軸複合スライド上のスピニングローラーが一連の往復運動を繰り返しながら金属を次第に成形していきます。
レジューシング (違径絞り)、ネッキング (くびれ絞り)
内部の支持具が不要なため空中のスピニングとも呼ばれるこの操作は、成形と仕上げが二次的に行われる凹形状の製品に用いられます(図4)。高い品質を得るため、あるいは、内部分割工具を用いる場合には、偏心内部ローラーを用いることもあります。
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図4−レジューシングあるいはネッキングと呼ばれる加工法は、加工時間のほとんどが内部の支持具なしで行われるので空中のスピニングとも呼ばれます。上図の左では加工品は外部から固定チャックに留められています。
シアフォーミング (剪断成形)
この成形法においては、金属の容積が軸方向に転位します(図5)。
B6 B7 図5−シアフォーミングを用いると円錐形の製品を単一パスで作ることができます。円錐の開放側はブランクの直径に等しく、肉厚の減少は円錐角の関数になります。この方法では短時間で製品を作ることが出来ます。
単一パスでは、円錐の開放側の直径はブランクの直径に等しくなります。このプロセスの特徴は非常に短いサイクルタイムです(図6)。肉厚の減少は円錐角の関数となり、次の式で表されます。
S1 = So X sinα  ここで、
S1 = 完成品の肉厚
So = ブランクの肉厚
α = 剪断角 (図7)
B8 図6−この直径 380mm、高さ 230mm の銅製の円錐はシアフォーミングで製造されました。所要時間は48秒です。円筒形の部分とビーディング(接続溶接)は同一サイクル内で行われました。これをマルチパススピニングで行うと所要時間は2分かかります。
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図7−シアフォーミングでは肉厚の減少は次式によって決まります。
S1=So X sin α; ここで S1=製品の肉厚、So=ブランクの肉厚、α=剪断角。
PとP'は材料が工程の中でどのように変化したかを示しています。
シアフォーミングは、剪断角が12〜80度の対照的な円錐形の中空製品を作るのに理想的な方法です。
シアフォーミングは、剪断角が12〜80度の対照的な円錐形の中空製品を作るのに理想的な方法です。シアフォーミングは冷間加工で行われるので、製品の強さが大幅に増大します。成形によって材料は軸方向に転位します。従って、シアフォーミングを行うためには塑性挙動の知識が必須です。塑性変形で生じる材料の強度上昇は一種の設計改良と見做されることがあります。例えば、30度の角度を持つ製品のシアフォーミングを行うと、16ゲージの軟鋼は冷間加工硬化によって11ゲージの軟鋼材と同じ程度にまで強くなります。この場合、シアフォーミングによって材料が50%節約されたことになります。
このような材料節約以外にも、シアフォーミングでは高速サイクルで製造を行うことができるとか、理想的な表面仕上げが得られなどの利点があります。設計者は製品の成形をマルチパススピニングで行うかシアフォーミングで行うかをまず考えなければなりません。
融通性の高い製造と素早い設定時間
過去30年の間に、スピニング加工はプレイバック/CNCスピニングマシンの出現により、プレスや深絞りに対抗できる加工法になりました。スピニングの長所としては、融通性の高い製造、比較的安価な工具コスト、簡単で経済的な工具やプログラムの修正、短い設定時間などが上げられます。適当な補助器具を用いると、最新のスピニングマシンはほとんど万能の加工機になり、簡単な操作で、1サイクルの間に、平面加工、プロファイリング、カーリング、ビーディング、シーミング、トリミング、切削加工など多くの操作を行うことができます。
新製品を設計する場合には、いろいろなスピニング法、特に冷間加工硬化、材料節約、表面仕上げ、サイクルタイムなどで優れた特長が得られるシアフォーミングを検討することをお勧めします。